4日目④「ピラミッドという世界で一番がっかりさせる世界遺産その3カフラー王とビューポイント編」




この下りは、階段ではなかった。滑り止め付のただの坂だった。一眼を首から提げていたため、転んでカメラをぶつけてはいけないので、カメラをかばいながら下りた。






ピラミッドの中への入り口はこのようにもっと狭かったため、引き返そうかどうか悩んだけれど、もう少し進んでみることにした。






ところが、通路はとても狭く、暗く、進むだけでも大変だったのに、相互通行だった。出てくる人もいるため、どちらかが待つ事になるけれど、その間も中腰でいなければならず、体勢的につらい。






結構長かった。そう感じただけかもしれないけれど。

とにかくカメラを落とさないように必死だったので写真を撮るのもやめて、「後少し後少し」と思って頑張って進んだ。






やっと中腰専門通路を抜けると、私の身長ぎりぎりぐらいの大きさにはなったけど、大多数の人はまだ少しかがまないとダメな高さの通路だったと思う。出ると少し明かりがあったけど、ストロボ無し一眼では設定を変えないと写真は無理だった。






まあいいよ。長い通路を終えたらどこに出るのか知らないけれど、そこへ着いてから写真を撮るから。きっとミイラか何かいるんでしょう。カレンダー写真はそれでは困るけど、いいのが撮れたらそれもありかも。「4月 ミイラ」みたいな。






だけどなんか、もわっとするな・・・。






そして、数メートル進んで驚いた。











又狭い通路なの?






一瞬止まって考えた。「どのぐらい上るのか」。ピラミッドの頂上までこの調子なら、階段でもない狭い通路を中腰のまま相当距離進まなくてはいけない。戻る時も同じだ。途中で具合が悪くなってもすぐには戻れない。






降りてきた人に、「このような登りが後何回あるの」と聞いてみた。これで最後だけどそれなりに長いよというような返事だった。そして、上に上がると何なのかと聞いてみたら、「こんな感じだ」みたいな言われた。

どんな感じなのか・・・。

詳しく聞こうと思っている間に通り過ぎて行った降りてきた何人かから、「すごく暑いんだよ上」という声が聞こえた。

暑いだけでなく、中は湿気が強く、ムッとしていた。息苦しいのだ。どうやら上も同じで、というか、多分下よりも暑いのではないかと思った。






それは悩むな・・・。

まず、私は、閉所恐怖症だ。だから狭い通路を歩くのが怖かった。明かりがあったし、回りに人がいたのでいくらか楽だったけれど、長い距離は危ない。そして、湿気と暑さがあるようなら、もっと危ない。

それでもその先に美しいものがあるのなら気力だけで行こうと思ったけれど、「こんな感じ」とは、どういうことか。

いや、そういう事だ。この通路と変わらぬ光景が待っているということだ。

経験上、行ってきた人の反応からして、全く行くだけ無駄であろうことが予想された。











やめるか。

上がってしまって具合が悪くなってからでは遅いし。こんなライトでは写真は撮れないし。






コンパクトカメラを出して一枚。蛍光灯があったので、撮れると思って。これが狭い通路と通路の間の休憩できるような場所。別に休憩所ではないだろうけど。






通路の様子。慎重170センチぐらいまでなら大丈夫かな。

高いところはね。低いところは、大分かがまないと歩けません。











なんかもう、早く出たい。バカバカしい。ピラミッドの中は、違うと思う。写真を撮るなら、観光を満喫するなら、外から見たほうがいいのだと思う。どうせ写真が撮れないような場所には行ってもしょうがない。うっそうとしていて、気分が悪いし。

出たほうがいいな。











ピラミッドの外での解放感

来た通路を戻り、一気に外へ出た。ただただ、早く出たかった。ほんの数分しかいなかったけれど、それでも嫌だった。何だか分からないけれど、本当にじめじめしており、呪われた場所とは言わないけれど、物分かりの悪い人が自分が悪い事を認めずに人を恨んだまま死んでいきその魂が宿っているような暗さがあった。






後になって調べたけれど、やっぱり上へあがっても何もないらしく、ミイラがあるかと思いきや、空の棺があるだけらしいです。なので、石でできた暑くて湿気が高く暗い広場に空の箱があるだけなので、行く必要はないと思います。











ピラミッドから外に出た時の解放感のほうがピラミッドに到着した時の感動より上だった。

ああ悲しき世界遺産。






入り口には出た時もそれなりに人がいた。なぜ入らずに入り口でうろうろしているのか分からなかったけれど、良く見るとちょっと離れてもやはりデコボコガッキゴキの出来栄えのピラミッドだと思う。






だけど、ピラミッドのガッキゴキより驚いたのは、











まだいたいのか。











そんなにヒマなのか。他に客はいなかったのか。どうして私に執着するのだ。






男 「ドーター オカエリ ワタシハココニイルヨ ラクダ 600」

私 「ラクダいらないって。写真撮りたいの。あっちから撮るから」






と言ってピラミッドを後ろから撮ろうとして歩いてけれど、まだついてくる。

それにしても、600エジポンはかなりのぼったくりだな。






カフラー王、後ろから。






やっぱりどうしても、何の感動もない。






そして、どうしてこんなにも回りが空き地なのだ。






全く絵にならない。全然美しくない。






嫌になっちゃうなもう。何て楽しくない観光地なの。何てがっかりさせる世界遺産なの。どうしたらいいのこれ。何してるの私。何て感動がないの。この、荒野のような場所にある三角藁ぶき屋根のそばに何時間いても感激することなんてないんじゃないの。

たかだか30か国数百都市とはいえ、一応観光慣れしているわけだし、色々なものも見たわけだけど、こんなにも変な気分にさせる場所はなかった。芸術性のかけらもない場所だ。






ピラミッドレストランに行きたかったけど、メンカウラー王のピラミッドもあるけれど、ここから歩いて行く気にならないな。ランチぐらいならピラミッドレストランで食べてもいいけど、もう歩く気はしないな。ピラミッド散歩、楽しそうな気がしない。






男 「ドーター ラクダイルヨ」






まだいたのか。






私 「ラクダいらないって言ってるじゃない。乗らないって。嫌だって背が高いから。」

男 「ロバイルロバ ロバモ600」

私 「聞いたよ。ロバも嫌なの。臭いし、疲れるから。乗るなら馬車だって言ってるじゃない」

男 「バシャアル バシャヨベル」

私 「甥がやってるっていうんでしょ」

男 「チガウ ムスコダ」











親族総出でピラミッドで働いているのか。

「男は全員ピラミッドへ出稼ぎ」、みたいな。











私 「馬車だって、600なんて高すぎる」

男 「カンコウポイント シッテルンダ ツレテイクカラ ミンナマワッテ 600」

私 「勝手に観光ポイントに連れて行ってもらっても困るんだよ。ピラミッドレストランへ行きたいとは思っているし、写真にいい場所があるだろうから、そのビューポイントには行くつもりだけど」

男 「ピラミッドミンナミエル ビューポイント ソコヘモイク ミンナイク」

私 「でも600じゃ困るわけ。高いの。300しかないの」






手持ちの現金は、600エジポンだった。払えないわけではなかったけれど、明らかにぼったくりなので300と言ってあった。だけど、300でも高いと思う。300は、90分料金だと思う。とはいえ、それはラクダやロバであって、馬車は分からない。多分一緒だと思うけど。







300ならぼったくりと分かっていても馬車なら乗ってもいいかなと思った。もう嫌になっていた。最後の願いはビューポイントで、そこからいい写真が撮れそうならいいかなと思った。そして、ピラミッドレストランでランチを食べて出ようかなと。






男 「バシャヨブ スグクル」

私 「300しかないって」

男 「ジャア 300デノル ドーター キニイッタラモットハラウ キニイラナイダッタラ300」






もう既に気に入っていないが・・・。






私 「ピラミッドレストランとビューポイントには行きたいの。そして最後はスフィンクスで降ろして欲しいの」

男 「ドッチモダイジョウブ」






レストランがどこにあるのか、ビューポイントがどっちがなのかも分からなかったため、方角というか、効率的ルートが分からず、どっちを先に行くのがいいか分からなかった。ただ、レストランを先に行かれると、そこで食事をするわけなので、待ってもらうことになる。待たせれば追加料金と言われるのは分かっており、そこでまたもめる。なので、レストランで降ろしてもらってもいい。

ところが、そんな複雑な話は通じないため、地理的にどうなのかさっぱり分からなかった。






そして、300でもいいと言って、息子とやらを呼んだ。とってもすぐ来たと思う。






私 「300しか払わないよ。もってないから。私はビューポイントとレストランに行ってスフィンクスで降りたいけれど、レストランの場所によってはレストランで降ろして欲しいの」






息子とやらは、分かったような返事をして、私を馬車に乗せた。











どうしようもない光景

ピラミッド到着間もないのにもう歩く気力すら失っていた私は、乗り物に乗れば多少は気が晴れるかもしれないと、ヨルダンの時を思い出し、ギザピラミッドで最後の希望を持って馬車に乗った。






馬車なら座席があるので、直接ラクダやロバを跨ぐ必要もない。落ちる心配もない。






そして馬車に乗って進むと、予想以上に情けない光景が待っていた。






何だかどこだかさっぱり分からん。砂漠にただ一本道を舗装しただけだ。






なぜ車を走らせるのだ。






空き地はロバとか馬車の休憩所みたいになっていた。もうちょっと色々と考えたほうがいいと思う。






一体何をするための空き地なのだ。






どう言っていいものか。普通、観光地ができると、その周りには、その景観を害さない範囲で観光地的なものが出来上がっていく。ピラミッドは割と高地なため、たとえば、街を見下ろせるポイントとか、そういうのを作り、ベンチを置くとか、そんな風になっていくと思う。なんというか、何でもいいからただ一本道を作り空き地にしておくとか、おかしいと思う。演出といった類の芸術的才能が全くないと思う。

その一方で、ピラミッドの保存にはあまり費用を費やしていないようで、外見が汚らしいと思う。

ピラミッドだけではなく全体的に汚らしいけれど。






馬車に乗って良かったかなと思った。歩きだと速度が遅いから、見た目が大して変わらない事に対しもっと嫌気がさしていたと思う。







途中、あれがレストランだと言われたので、ビューポイントの手前であった事が分かった。到着が早すぎてまだそれほど空腹でもないし、もうレストランもどうでもいいやと思い、構わないからビューポイントへ行ってと言った。

最後の頼みのビューポイントだ。ギザの三大ピラミッドが一望できるビューポイントだ。そこで1枚撮れれば、カレンダーのうちの1枚は出来上がる。その後スフィンクスで一枚で、気分良くピラミッドから出て、遅めのランチにしようじゃないか。












決定的瞬間

それは、意外にも早く訪れた。後10分ほど馬車で走るのだろうと思っていたその時、馬車は空き地をぐるっと回り、車のある変な場所へ入って行った。






馬車はUターンするかのようにぐるっと回り、車が見えないであろう位置まで行った。別に人がたくさんいたわけではなく、標識があったわけでもない。ただ客引きが馬車を停め、こう言った。











「ココガ ビューポイント」











え?












確かに3つのピラミッドは見えている。だけど、これだけ離れたら3つ同時に視界に入るのは当然だ。






もう、腹立たしいを通り越して、呆れた。

ビューポイントと言うためには、そこからの見晴らしが他と比べて素晴らしく、見えやすいように邪魔が入らない工夫がされている、観光地自慢の場所なはずだ。ただ単に離れたから三つ一緒に見える場所という意味ではない。






これのどの辺がビューポイントなのか教えて欲しい。思いっきり道は写っているし、人はいるし。






これがエジプトギザ三大ピラミッドが誇るビューポイントであるのなら、最高にバカバカしい

下らない。悲しい。高い入場料をとりながら、中はほぼ何もしていない状態で、お土産屋が入ったレストランを建設したぐらいで、後は空き地のまま。車も通らせるし、停めさせる。美しく見せる工夫もなされていない。

私は、こんなところへ来たのか。






これがピラミッドなのか。






もちろん、写真は撮りようであるので、もっといい感じに見えるように撮る事は可能だった。だけど、本当に美しい光景は、どこから撮っても美しい。誤魔化して構図で何とかしないと美しい写真にならないようなら、それは最初から大して美しくはない。

不要と判断したため、馬車から降りる事もなく、馬車の上からだけ数枚写真を撮っただけだった。どんより暗い気持ちで。






ピラミッド2つでも3つでも大して変わらない。どっちでもいい。








しゃべる気力も失っていると、馬車男子が、写真を撮ってあげると言ってきた。観光中だと思い出す瞬間。写真を撮る事しか考えておらず、撮られる事は全く考えていないため、撮ってあげると言われない限りは、自分の写真を撮ろうなどとは滅多に思わない。鏡に映った自分を撮る場合を除いては。

一応やっとピラミッドに来たわけだし、写真を1枚撮るごとにいくらと請求してくるかもしれないけれど、払わなければいいのでまあいいかと思って一眼を渡した。






マスクで悲しい表情が分からなくて助かる。






砂ぼこりで顔を上げているのが辛かった。






かなりショックだったので無言になったけれど、こんなところにいてもしょうがないし、降りて写真を撮る必要もないと思うような風景だったので、「もういいよ」と言った。レストランも行かなくていいから、後はもうスフィンクスの入り口の方まで行って降ろしてくれと。






そして、馬車は又進んだ。






カーブの道なんかだと多少はいい構図になるかもしれない。車がなければ。






そして、良く分からない四角い物置と井戸みたいなものがなければ。






「ピラミッドの回りは大都会」みたいなギャップの写真もいいかもしれないとは思うけど、大きさ的にどちらも入れるのは無理なのだ。ケニアでは、ナイロビ国立公園では動物の後ろに高層ビルというアンバランスな写真が撮れて結構好きだったけど、エジプトにはそんな芸術性はないと思う。






車は入れちゃダメだよ。おかしいって。だいたい、アクセルとブレーキを間違えて突っ込んでピラミッドを壊したらどうするのさ。






駐車場が出てきた上、柵が見えたので、スフィンクス付近入り口に近くなったのかと思った。






別にそういうわけでもなく、突然こういうものを作るだけらしかった。






昨日タクシーに乗って道路を見て思ったけど、どうしても、予想不可能な出来栄えのものを作っていると思う。道路とか建設とか建築系に相当弱いと思う。理系的職人的男子がいないというか、エジプト男子には理系は向かないと思う。その上、芸術性がない。エンターテイメントというか、遊び心がないというか。






こういう柵は、入り口付近なら理解いくけれど、何のためにこうなっているのかさっぱり分からん。






入り口全然見えないし。空き地しか見えないし。






でも、この道を降りて行ったところがスフィンクス付近の入り口であり、今の私にとっての出口であろうことは分かる。






馬車とか馬もたくさん見えるし。






馬車男子 「スフィンクス シタマデイケナイ」

私 「何で?スフィンクスまでだって言ったじゃない」

馬車男子 「ソレハマチノバシャ ワタシココマデシカイケナイ」






数行の英文をやりとりをしているうちに分かったけれど、どうやら、ピラミッド付近で走るというか稼げるライセンスと、街を馬車やラクダで走れるライセンスとは違うらしかった。彼は観光地でしか馬車に乗れないらしいので、乗り換えてくれと言っていた。

まあいいか。






もうすぐ着きそうなため、こっそり財布を出し、現金300を残して残りの300をとり、ブラジャーの中へ隠した。良くやる方法だ。財布を堂々と見せて、「ほら、これしか持ってないから払えないんだよ」という事で納得させる。払う時に財布をのぞかれて少しでも多く現金が見えたらとことんたかられるかもしれないので。






そして、スフィンクスの頭が見えたなと思ったこの時、馬車男子が聞いてきた。






馬車男子 「アー ユー ハッピー?」






この1行で、「キニイッタラ」と言った理由が分かった。






私 「ハッピーじゃないよ」

馬車男子 「ナンデダ!! ナンデハッピージャナインダ!!」

私 「別にいいじゃない。ピラミッドに落胆しただけだよ」

馬車男子 「スフィンクス モウチョット チカクイクカラ」

私 「そういう問題じゃないから、いいから別に」






馬車男子 「ハッピージャナイ! ハッピージャナイ!ナンデナンダ!






うるさいよあんた一人で興奮して。

私がハッピーだろうかどうだろうがいいだろうに。






マイドーターのラクダ乗りは、「300 キニイッタラモットハラウ」という感じだった。「If you like it」だったんだけど、「Are you happy?」で分かった。つまり、ハッピーだと言えば、じゃあもっと金をくれと言うのだ。気に入ったんだろうからもっと払えと。だから、私にハッピーと言わせなければならなかった。

ところが、私はそれを見越したため、最初からハッピーじゃないと返事をした。それで驚いてしまった。ハッピーかと聞かれたら、とりあえず全員ハッピーだというのが普通だろうと思う。過去にこのような反応をされたことがなかったのか、とっても動揺して何でハッピーではないのだとプチパニックを起こしていた。






うっとうしいな今回も。






300エジポンを渡してさっと降り、完全無視をした。エリアが違うのでそこを超えればついてくる事ができないだろうと分かったため、さっさと町のエリアに入っているだろうと思われる場所まで数メートル歩いて行った。






ああ、うざい。たったこれだけの馬車で300ももらっておきながら、まだ不満か。まだ金が欲しいか。

こんな観光地で、地球の裏側からはるばる来た人達を不満にさせてはいけないとか、そんな事は思わないか。そんな事をしていたら自国の観光客が減り収入も減ってしまうかもしれないとか、そんな事は思わないか。自分が金が入ればそれでいいか。






そして、目に入ったスフィンクスで、立て続けに落胆することになった。





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-エジプトピラミッド切れ気味一人旅

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