5日目⑥「暗闇とは恐ろしい」

陽暮れというものを、のんきに考えていた。






「死海さへ諦めれば、後はアンマンへ帰るだけ。反して走ってきたナビに従えば、きっとすぐアンマンへ帰れる。宿泊先は1日目と同じホテルだから、暗くても入口を見ればわかるはず。お昼はスナック菓子で終わったし、夜は小奇麗なレストランにでも入ってちょっと高そうなヨルダン料理食べよう」

などというものが、私の今晩の理想であった。






実は私、まだ一度もヨルダン料理を食べていなかった。結婚式の前日に友達と食べたのはヨルダン料理ではなく西洋料理のようだったし、結婚式で出た料理はフランス料理みたいだったし。おまけに昨日の夜はマックだし。




一度ぐらいはヨルダン料理を・・・。






と思いながら、住宅街だからスピードを落としながら進み、15号線へ向かいました。






だけど、陽がどっぷり暮れても15号線に着く様子もない。

距離が全くつかめなかった記憶があるので、もしかしたらナビは縮小表示ができなかったのかもしれません(最初にもめたのはそれだったのかも)。






ナビに素直に従えば、後2、3キロぐらいで国道へ入れると思っていた。そしてそのまま国道を走り、アンマンなんて、すぐそこだと。






陽は暮れて太陽の明かりはないけれど、電灯があるからいいよ。






が、そんなものはなかった・・・。






もう、ただ真っ暗






まっくら・・・・






マックラ・・・・・






もちろん、車のライトはついています。でも、あんなものは、数メートル先しか照らしてくれません。




ハイライトにしてみたけれど、あれほど何もない真っ暗闇では大した違いがありません。物があればライトに当たって距離感が掴めただろうけれど、砂漠ではそうもいかない。住宅街からもはずれていたしね。






夜も暗くなったから子供はいないので危なくなくていいけれど、こうなると、むしろ子供がいた時間が恋しい。






田舎の山の奥の奥を想像して頂けると一番いいと思います。東京に住んでいる人にとっては恐ろしく暗い光景です。どこに住んでても同じか・・・。






ただただ、手に汗握る暗闇との闘いだった。






何が怖いって、暗くて一人ぼっちで怖いとかそういうことじゃなくて、まず、数メートル先しか見えないので、人が出てきたら間違いなく轢いてしまうということが怖かった。




でも、早く明るいところへ行きたいし、40キロぐらいは出していた。40キロでも、急に人が出てきたら多分ブレーキを踏んでも間に合わず、轢いてしまうはず。そのスピードじゃ死ぬ確率は少ないけれど、致命的傷を負わせる可能性はあると思う。






じゃあスピードを落とせばいいじゃないと思うかもしれないけれど、そんなことをしたら、暗闇から抜けるのにもっと時間がかかってしまう。






そして、数メートル先しか見えなくて二つ目に怖かったことは、人を轢かなかったとしても、自分が崖から落ちるかもしれないということ。




ガードレールなどありませんでした。なので、もしも走っている場所に高低差があると、急カーブで見えなくてそこからヒョロヒョロ~と車ごと落ちてしまうかもしれない。でも、どこへ落ちているか分からない。暗闇から暗闇へ落ちるだけです。






もちろん細心の注意を払って運転していたけれど、運転の腕も大事だろうけど、もはや多大に「目」の問題でもある状況だった。




眼鏡はかけていたけれど、それでも足りなかった。視力2.0ぐらいあったなら不安は減ったかもしれない。そんな時、生まれるのならアフリカがいいのではないかと思ってしまう。






そして私は、そんな暗闇を2時間ぐらい走り、ちっとも見えない国道にだんだん不安になりました。






助かったのは、どんなに暗くてもナビが動いており、私の居場所が分かってちゃんと誘導してくれていたこと。

遠回りさせられた気がしてしょうがないけど。






でも、しばらく走っていると、ガソリンがなくなってきて、更に焦ることになった。あと残り2ブロックになっていた。

リッター結構走ったので、2ブロックでもすぐ国道に出ることができれば十分なガソリンの量なんだけど、15号線なんて見えやしなかった。




もちろん、一般道にガソリンスタンドなんてなかった。店一軒どころか、明かり一つなかった。






舗装道路ばかりを走っていたから助かっているけれど、ガソリンを入れたい。






そう思っていたら、何かピカピカ光ってるものが見えました。


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-ヨルダンレンタカー運転一人旅

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